土地を守りたいのか、それとも資産を守りたいのか
資産の組み換えは資産を守り増やすための重要な選択肢のひとつ
住宅供給過剰になってから久しいですが、家主さんにとっては大変厳しい状況です。
特に、周辺環境の変化に伴って賃貸経営の状況が悪化している場合は、どのようにしたら良いのでしょう。
答えは「資産の組み換え」です。
|周辺環境の変化は我慢しても好転する可能性は少ない
所有している物件の周辺に空家が目立つようになってきた。
それも、賃貸住宅だけでなく、分譲マンションや戸建てにも空家が目立つ。
このような状況が急速に進む地域があります。
大規模開発が行われ、人口が増加するような見込みがないのであれば、今後の資産価値は目減りする可能性が高まります。
日本全体での人口減が確実な状況の中で、人はどんどん駅の近く、さらにはより便利な駅へと移動しています。
マーケットが縮小する中で、小売店舗などが新規出店する可能性は少なくなりますし、撤退していくことも十分考えられます。
変化してしまった環境が、元に戻り、さらに以前よりも活況を呈する、などということは期待しないほうが賢明です。
|不動産の買い換えによる、資産の組み換え
空室期間が長引くなど、賃貸経営に深刻な事態が起きている場合にまず検討するのは、リノベーションを含めた大規模リフォームでしょう。
しかし、リフォーム費用の回収に10年以上かかるようなら、建て替えも選択肢に入れても良いと思います。
その際に重要なのが、空室期間が長引くなど、賃貸経営に悪影響を及ぼしている原因が物件そのものにあるのか、それとも周辺環境の変化にあるのかを見極めることです。
特に、建て替えに関しては、少数でも入居者がいる場合は立ち退き料・建物の解体費などの費用が必要です。
この費用は、更地に新築する際には必要ない費用です。
このような費用をもってしても、周辺環境(賃貸マーケット)が良く、今の立地が適切なのであれば不動産を買い換える必要はありません。
しかしながら、少しでも周辺環境(賃貸マーケット)の将来性に不安がある場合はどうしたら良いのでしょう。
この場合は、現在の場所を売却し、より賃貸ニーズの強い利便性の高い場所に買い換えることを検討します。
買い換える場合でも、周辺環境(賃貸マーケット)の調査は綿密に行う必要があります。
|不動産以外の資産への組み換え
資産の組み換えは、不動産以外の資産へ組み換えても良いと思います。
ご自身の投資マインドがどのようなものかによって、最適な組み換え先は変わります。
一般に不動産投資は中リスク・中リターンと言われていますが、投資先の組み合わせ、いわゆる「ポートフォリオ」、によってリスク軽減を図ることができます。
この組み合わせは不動産だけでなく債権・株式・預金・現金なども考慮した組み合わせです。
投資先の組み合わせはリスクとリターンに直結します。
投資する人の年齢や性別、家族構成等によって望ましいリスクとリターンは千差万別です。
投資をされるご自身が望むリスク・リターンによっては、不動産を別の金融商品に換価することも検討します。
|土地を守りたいのか、資産を守りたいのか
最後に、自問自答していただきたいのです。
自分は「土地を守りたいのか、資産を守りたいのか」を。
今でも、日本には土地信仰が少なからずあります。
先祖代々の土地、生まれ育った土地、苦労して手に入れた土地、という愛着や思い入れがあるのは当然です。
しかし、次世代へ上手に資産承継をしていかなければ、先祖代々の土地も切り売りすることになるかもしれません。
または、抵当実行によって失ってしまうかもそれません。
先の人達によって守られてきたものは、「土地」でしょうか。
それとも、土地から産み出される大地の恵という、野菜などの「果実(生きるのに必要なもの)」でしょうか。
ほとんどの場合、その土地から産み出される果実を守るために土地を守ってきたのではないでしょうか。
市街化が進み、農業ができなくなった地域の土地は、賃貸住宅や駐車場という形に姿を変えながらも、果実(賃料収入)を産み出してくれています。
土地を守ることは手段であり、目的ではありません。
土地に愛着を持つことは悪いことではありませんし、必要なことだと思います。
なぜならば、ひとつとして同じ土地・不動産はないのですから。
しかし、その愛着が拘泥へと変わり、自らの資産を増やすどころか、減少させてしまっては元も子もないのではないでしょうか。
by 大丸商事 長谷川浩一
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