入居者とオーナーのトラブル事例と対処法
オーナーと入居者のトラブルは家賃滞納だけではありません。入居者同士のトラブルや設備系トラブルの解決を求められることもあります。このときの対応次第で入居者との関係に亀裂が入ってしまうこともありますので、注意が必要です。
今回は設備系トラブルに起因した入居者との関係悪化事例を紹介します。自主管理をしているとどうしても直接入居者と対面する機会がありますので、参考にしていただければと思います。
事例1:インターネット設備の不具合
この入居者は入居歴が8年程で、賃料滞納などは一切ありませんでした。しかし、ある日突然インターネットが接続できなくなりました。入居者が回線事業者に連絡をし、原因を調査すると建物内の配線に問題が発生しており、断線状態になっていたそうです。
当然、入居者は宅内の自身が設置した設備に起因するものではないので、回線事業者へ修理をするように依頼をしました。回線事業者からは修理に費用はかからないが、建物所有者の承諾が必要だと伝えられたので、入居者は修理が必要なことをオーナーに説明し承諾を得ようとしました。ところがオーナーは修理の承諾を渋りました。
入居者はテレビもインターネットを介して受信して視聴していたため、情報インフラが断たれた状態となってしまいました。それであれば、せめてテレビだけでもということで、テレビアンテナを介して視聴しようとしましたが、アンテナ線も断線状態になっていたそうです。
結局、オーナーは一切の対応を拒否したため、入居者は法的な対応も検討しましたが、将来的なことも考慮した結果、やむなく引っ越すことにしたそうです。
事例2:水栓設備の不具合
この入居者は入居歴が6年程で、事例1の入居者と同様に賃料滞納などは一切ありませんでした。
設備してある水栓はこの入居者が入居する以前から設備されていたもので、入居当初からそれなりの劣化はあったそうです。それでも使用そのものには問題が無かったのですが、とうとう水栓を閉めても水が止まらないというトラブルが発生しました。そこですぐにオーナーに連絡を取り、報告をしたところ、東京都水道局指定の水道管業者の手配をしてくれたそうです。
ここまでは、一般的な流れでオーナーもしっかりとした対応をしています。
しかし、いざ修理見積りが出た段階で、オーナーは突然入居者に対し費用を負担するように要求しました。さらには他の業者からの見積りも要求したそうです。
この時点では水栓故障により水が止まらない状態なので、水道メーター横の元栓で閉栓しおり、室内で水は出ない状況です。
最終的に入居者は半額を支払うことで、最初に手配された業者の修理で水の利用が再開できました。入居者は半額負担することで早期解決を図ったわけですが、本音の部分ではオーナーとの関係を心配して意見主張を躊躇した部分もあると言います。
まとめ
いずれの事例も生活に必要不可欠なインフラ設備に不具合が発生した事例です。
国土交通省のガイドラインや東京都の賃貸住宅紛争防止条例では、原則として入居当時に設備されていたものについて、入居者の故意や過失がある場合を除き、故障など不具合発生時にはオーナーの負担で修理修繕することとされています。
また、2020年4月に施行された改正民法第611条では「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される」と規定しています。
したがって、修繕がなされない結果、賃貸物件の一部が使用収益不能と判断された場合には、賃貸人の責に帰すべき事由があるか否かを問わず、賃料は当然に減額されます。
このように設備トラブルからオーナーと入居者の関係が悪化するきっかけとなる場合があります。まずは契約書の内容、契約書に記載のない場合は法令やガイドライン、判例などを参考にお互いが納得する解決を図ることが長期入居につながります。
また、オーナーとしては、入居者の立場に立って考え、適切な対応を心掛けることが大切です。入居者との円滑なコミュニケーションを保ち、適切な対応を取ることで、互いに信頼関係を築き、長期的な入居を実現することができます。
入居者もオーナーの負担を考慮し、自分の責任範囲内で対応できるトラブルは自ら解決することが望ましいです。特に小さな不具合は発見した時点でオーナーに相談し、費用が軽微なうちに修繕をすることが双方にとってメリットになることが多くあります。
お互いに協力し合うことで、良好なオーナー・入居者関係を築くことができるでしょう。
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