貸主による代理請求が可能な保険
賃貸住宅内で死亡事故がおこった場合、遺族に対して損害賠償請求をせざるを得ない場合があります。
特に、単身者向けの住宅の場合、家族が同居しておらず、室内の片付けの問題も出てきます。
さらに、高齢者などによる孤独死の場合、親族とも疎遠になっていることも珍しくなく、相続人が協力的でない場合もあるので、貸主にとってリスクとなっています。
以下は単身者の孤独死のケースです。
家賃保証会社では不十分
家賃保証会社を利用すると原状回復費用に関する保証が付帯している事があります。
しかし、保証限度額が非常に低くなっているものもあり、十分とは言えません。
また、保証委託契約上、借主死亡と同時に保証委託契約が解除となり、死亡日以降の賃料が保証されない約款となっている場合があるので注意が必要です。
家賃保証会社はあくまで、「家賃滞納」に関するものという認識が望ましいと思います。
入居者の加入する保険でリスクはカバーできるか
賃貸住宅の契約者や入居者は必ずと言っていいほど、賃貸住宅向けの保険に加入します。
これは、契約条件になっているためです。
基本的には「借家人賠償責任保険」という借主が何らかの事故などでお部屋に損害を与えてしまった場合に、貸主に対して負う賠償責任をカバーする目的で契約条件となっています。
この「借家人賠償責任保険」の特約として色々な補償がカバーされ、現在の賃貸住宅向け保険の形となりました。
この特約の中に「遺品整理費用補償」や「死亡による修理費用補償」があり、入居者が加入する保険で孤独死もある程度リスクヘッジできるようになっています。
しかし、保険の性質上、保険金ができる人は契約者であり、契約者死亡の場合、保険金請求権は相続人となります。
つまり、孤独死の場合、借主の親族に保険金請求をしてもらわなければならないのですが、様々な事情により親族が協力的でなく、保険金請求を拒む場合、借主が加入していた保険は名ばかりのものになってしまします。
貸主側で選んだ保険商品で、リスクのカバーがある程度できると考えていたものの、まったく役に立たない場合もあるということです。
生活保護でも安心できない
実際に当社で扱った事例です。
とある単身向け住宅に単身の男性高齢者がお住まいでした。
男性は病気を患った関係上、生活保護を受給しながらの生活をしていました。
更新の時期となり、当社の近くの物件なので、更新に関するお知らせを直接届けに行ったところ、偶然にも玄関先(室内)で倒れているのを発見しました。
発見時には意識があり、救急車で病院へ運ばれましたが、治療の甲斐なく数週間後にお亡くなりになりました。
申込書等に記載されているご親族に連絡を取った際の聞き取り調査では、相続人はいずれも近しい関係ではありませんでした。
教えて頂いた親族数名に連絡を取るも「関わりたくない」の一点張り。
「少し考えさせて欲しい」と言った親族のうちのお一人も最後には「相続放棄の手続をしました。」とのこと。
完全に手詰まりです。
相続人にお願いしたのは、「保険金請求をして欲しい」の一点のみでしたが、皆さん遠方にお住まいで、高齢の方ばかりでした。
どうも、「保険金請求の手続きをしてしまうと、後処理も全部させられる」と考えていたようで、その溝は最後まで埋まりませんでした。
さて、生活保護受給者であったことから、行政にも相談をしましたが、こちらも家賃保証会社と同じで、当人が亡くなると関係も終了するようです。
生活保護者に関しても、行政は全く当てになりません。
貸主が保険金を請求できる安心感は絶大
当社で入居者に加入をお願いしている保険は「東京海上ミレア少額短期保険株式会社」の「お部屋の保険 ワイド」という商品になります。
この保険の優れている点のひとつは、「貸主被保険者追加保証特約」だと思います。
この特約は、保険契約者やその相続人が保険金を請求しない場合、家主が保険金を代理請求できるものです。
この特約が付保できる賃貸住宅向け保険は珍しく、上記の保険の他に、大東建託グループのハウスガードの「新リバップガード」や日本少額短期保険の「みんなの部屋保険G2」などに限られます。
相続人が協力的でなくても、保険をしっかり活用できる安心感は計り知れません。
by 大丸商事 長谷川浩一
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