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2018年08月22日
コラム

なぜ、問題先送り型の「定期借家契約」は決まりづらいのか?

賃貸住宅の契約形態には「普通借家契約」と呼ばれるものと「定期借家契約」と呼ばれるものがあります。

定期借家契約は平成12年3月1日に施行された「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」にある契約類型のうちのひとつです。

現在は「普通借家契約」が圧倒的多数を占めていて、いまだに「定期借家契約」は少数派です。

また、入居者を募集している賃貸住宅の契約形態を見てみても、そのほとんどが普通借家契約となっています。

いったいなぜ貸主・借主の双方に利益となるはずの「定期借家契約」は件数が少ないのでしょうか。

 

「認知度」も「利用度」も低い「定期借家契約」

2015年3月に国土交通省が発表した「平成26年度住宅市場動向調査」によると、定期借家について「知っている」と回答した人が「11.2%」、「名前だけは知っている」は「30.7%」でした。

「名前だけは知っている」人は契約内容を把握していない状況なので、約9割の人は定期借家契約の詳細を知らないと言えます。

これは「民間賃貸住宅に住み替えた世帯」における認知度なので、お部屋探しをしたことがある「経験者の認知度」ということになり、かなり低い数字です。

人はよく知らないものを怖く感じる習性があるので、もしかしたら「定期借家」の表示のある物件が避けられている可能性もあります。

また知っていたとしても、借りる側から見たデメリットが賃貸住宅市場において強調され過ぎているケースもあり、「定期借家契約」の物件は不利な状況にあります。

そして実際に定期借家契約が使われている賃貸住宅は、全体のわずか「3.2%」という調査結果になっていました。

想像の上を行く少なさでした。

 

普及促進活動が足りていない?

今年で定期借家契約の制度が平成12年に施行されてから18年が経過しますが、お世辞にも普及しているとは言えない状況です。

他業界に比べると不動産業界は依然として保守的な業界だそうです(変わろうとしている部分も多々ありますがなかなか追いつきません)。それが定期借家契約が普及しない理由のひとつだと思いますし、定期借家契約そのものを促進したいとは考えていないような気もします。

なぜならば、規定により普通借家契約と比べて借主側に説明しなければならない事項や書面が増えると同時に、契約満期管理がより厳格かつ煩雑になっているからです。

そしてなによりもメディアの定期借家の取扱いがあまり良いとはいえません。

業界からの働きかけがなければ、メディアも消費者寄りとなります。

そうすると、どうしても貸主側の「有無を言わせず契約を終了したい」という部分だけクローズアップされた取扱いがなされがちです。

このようなマイナスイメージが広がってしまうと、先の調査で「知っている」と答えた人の中でも、間違った認識がなされている可能性も否定できなくなります。

 

定期借家契約こそが普通の賃貸借契約

定期借家契約は期限がきたら契約が終了する「更新の無い」契約形態です。

一方、普通借家契約は当事者が自ら更新の合意をしなくても法律が勝手に更新をさせ、契約を存続させてしまう「法定更新」があります。

でも考えてみてください。

不動産賃貸以外で、契約期間が満了しても契約が終了しないなんていうことが通常ありますでしょうか。

レンタカーであれホテルであれ、期間が満了すれば契約は終了して返還することが当然です。携帯電話の契約など継続性のあるものも「自動更新」の取り決めをしているから継続しますが、それがなければ2年なら2年で終了です。

それだけ、日本の普通借家契約は「異常」だと言えるのではないでしょうか。

このような状態になった理由は一言で言えば「戦時立法」にあります。

借地借家法が大正10年に制定された際には諸外国と同じ、今で言う「定期借地借家」の制度で「期限がきたら契約終了」でしたが、昭和16年の戦争を前に改正され「法定更新」が誕生しました。これにより、期限がきても契約が終わらなくなりました。

いまだに先の戦争が、現在の賃貸借契約にも大きく影響しているのです。

それを何とか元に戻そうとして制定されたのが平成12年に施行された特措法です。

 

貸主側にも問題あり?

民法の基本原則に「契約自由の原則」というものがあります。

これは、「公の秩序や強行法規に反しない限り、当事者が自由に締結できるという民法上の基本原則のこと」です。

賃貸借契約においてもこの原則は有効に働きます。

定期借家契約は、原則として契約満了で契約終了となりますが、「再契約」が否定されているわけではありません。

そして、新たに契約を結ぶことにより借主は住み続けることができます。

借主側から見た場合、契約期間満了で引っ越さなければならないのか、それとも再契約をして住み続けることができるのか入居の段階で判然としないのは不安です。(実際に借主側は再契約無しの気構えが必要ですし、不動産会社はその様に説明します。)

では借主側の不安を取り除くために貸主側ができることはないのでしょうか。

もちろんあります。貸主側が再契約を原則「保証」してあげればよいのです。

賃貸住宅の場合、貸すことが目的です。

ですから貸主からすると当然ですが、優良な入居者には長くいてもらいたいと考えると思います。

貸主も闇雲に「契約を終了」させたいわけではありません。

とくに戸建賃貸の場合は借りる側も長く住みたいと考えることが多く、契約期限がきても再契約をしたいと思っています。

ただし「保証」といってもあくまでも原則であり、借りる側に一定の契約違反があった場合は貸主が「再契約を拒絶できる」ことも条文に入れる必要があるでしょう。

 

貸主側の意識改革で定期借家契約でも成約できる

借りる側は、貸す側が思っている以上に将来を考えながら住宅を決めています。

安くない引っ越し代を払い、そして家賃を払うことになるので、定期借家契約でも一定程度住み続けられる保証があると良いと思います。

貸す側が歩み寄れる部分は「再契約の保証」や「契約期間の交渉に応じる」などいくつか考えられます。

しかし同時に、貸主側には覚悟が必要になるでしょう。

「空家があるから、とりあえず貸してみて、その先は契約期間満了時にまた考える」

といった、問題先送り型の定期借家契約は、真剣に住まいを探している借主側には見透かされ、いくら募集をしても成約に至りにくいです。

契約期間満了で契約を終了することができる定期借家契約でも、貸主側はしっかりと意識改革をして、借主側と向き合う必要があります。

この意識の部分に関しては、普通借家契約となんら変わりません。

定期借家契約における借主側のメリットは少なくとも次の2点があります。

  • 長期の契約期間の場合、普通借家契約に必要となる「更新料」が軽減される
  • 2~3年の契約期間の場合、貸主側による不良入居者対策が行えるので、良好な住環境が確保できる

 

ぜひ貸主・借主双方とも、前向きに定期借家契約を利用してほしいと思いますが、そのためにまずは貸主側が借主側に見通しを示す必要があります。

そうすれば自然と定期借家契約でも入居者は集まるでしょう。

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