エアコン 1部屋1台が当たり前!?
【7月の家庭用エアコン出荷台数記録更新】
日本冷凍空調工業会のまとめによると、今年7月に出荷された家庭用エアコンの台数が、同じ7月度としては2013年を上回り、5年ぶりに最高を更新したようです。
猛暑による新規設置のほか、既存エアコンの故障等による交換も多数あったと想定されますが、「1部屋に1台」の流れも出荷台数の増加に拍車をかけた結果だと思います。
この「1部屋に1台」が重荷になっている賃貸住宅がちらほら出てきています。
1部屋1台の設置スペースが必要?
8月も後半に入り、やっと暑さも落ち着き始めました。
それでも週間予報を見ていると、まだまだエアコンが必要な気候が続きそうです。
ここ数年の比較的新しい賃貸住宅では「エアコンが各部屋設置可能」は当たり前ですが、築20年を超える建物の中には各部屋設置ができない住戸もあります。
特に、面積が「30㎡~40㎡ぐらい」、間取りでいうと「1DK~2LDK」のお部屋にその傾向が多いように感じます。
各部屋に設置ができない場合、エアコンと扇風機やサーキュレーターの併用で住戸全体の気温を調整することになり、本来必要ない部分まで冷暖房を効かせることに。
電気代にも影響するだけでなく、効き具合も部屋によりムラが出て、すごく効いている部屋とそうでない部屋が出てきます。
上の画像のようにお部屋どうしの仕切りがある程度開放できる状態でも、今年のような猛暑だと効きが弱く感じるかもしれません。
賃貸住宅でも、エアコンが1部屋1台設置可能な状態にしておくべきだと思います。
室外機置場に困った既存物件
当社の管理物件で室外機置場が確保できず、セパレート型のエアコン設置が各部屋にできない建物があります。
築年数は約20年、構造はRC造でかなりしっかりしたマンションです。
間取りは「田の字形」の「2LDK」、北側に洋室が1室あり、その洋室の窓は共用廊下に面した腰窓が1箇所のみ。
この北側の洋室にセパレート型エアコンの設置ができないのです。
理由は、設計段階で共用廊下に室外機設置スペースを設けなかったから。
オーナー様によると、「室外機置場を確保する」か「居室の面積を少し増やす」かの選択を建築会社から求められたそうです。
当時は、「北側のお部屋」「通風が確保できれば何とかなる暑さだった」という2つの理由で居室面積を優先させたそうです。
確かに20年前から今年の猛暑を想定することは不可能ですし、通年必要なお部屋の広さを優先させたい気持ちは痛いほどよくわかります。
しかし、いざエアコンを設置しようとすると共用廊下の幅があまり広くないので、北側のお部屋には窓型エアコンの設置しかできません。
お部屋探しをしている人によると「窓型エアコン」の評判はあまり良くありません。
主な理由は次の2点です。
- 窓が半開きになるので、防犯上心配
- 室外機がすぐ目の前にあるのと同じで、音がうるさい
そしてなにより、若年層の人は、窓用のエアコンを使ったことがないばかりか、見たこともない機械だから心配という声も。
エアコンに関心が向く夏場の成約率はどうしても悪くなります。
先を見通しながらプランニングすることの難しさ
エアコンひとつとっても20年の間に位置づけが大きく変わりました。
かつては「贅沢品」と言われていたものが、当たり前で無くては困る「必需品」へと変わりました。
まるでかつての冷蔵庫やテレビ、電話のように。
今はスマート家電をはじめとした「IoT(アイ・オー・ティー)」が話題になっています。
あらゆるものがネットワークに接続され、便利な生活が送れるようになるのでしょう。
でも、既存の物件はもちろんですが、これから新築する建物も将来「IoT」に対応できるのでしょうか。
技術やモノは日々研究され、どんどん新しく進化をしています。
いま最新のものはいずれ当たり前になり、いま当たり前のものは陳腐化します。
将来性のある賃貸住宅を建築するにはコストが掛かりますが、長い目でみると意外と安上がりになることも多いですよ。
by 大丸商事 長谷川浩一
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