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2018年09月14日
コラム

生産緑地の2022年問題は収束へ向かう?

生産緑地に指定された土地が指定解除となり、一斉に市場へ流れ込むと言われている、いわゆる「2022年問題」。

メディアなどでは「不動産価格の大暴落が起きる」と煽るような報道もある中で、国も本腰を入れて事態を収束させようと法改正を行いました。

この法改正により新たな事業が活性化してきているのと同時に、生産緑地の所有者の選択肢が広がることとなった今、生産緑地の未来に注目が集まっています。

現在、生産緑地に指定されている土地を有効利用して次世代につなげるにはどうしたら良いのかを考えます。

そもそも生産緑地と何か

「生産緑地」とは農業を営むことを条件に、農地を緑地として指定する土地制度のひとつです。

そして、生産緑地に指定される緑地は「市街化区域内」に限られます。

というのも、市街化を促進するための区域の市街化区域において「農地や緑地を守ろう」というのが生産緑地法の目的だからです。

 

生産緑地となる要件

  • 公害又は災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全等良好な生活環境の確保に相当の効用があり、かつ、公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているものであること。

  • 五百平方メートル以上の規模の区域であること。

  • 用排水その他の状況を勘案して農林漁業の継続が可能な条件を備えていると認められるものであること。

 (生産緑地法第3条1項)

 

上記のような要件を満たし生産緑地に指定されると、「固定資産税の課税の軽減」「相続税の納税猶予」や「自治体による助言」が受けられるメリットがあります。

一方、「営農義務」「転用転売の制限」「土地形質の原則変更不可」や「土石の採取等の制限」などが課せられます。

要するに、「税金の軽減などメリットを与える代わりに、その場所で営農をしなさい」というのが生産緑地といえます。

 

なぜ指定が解除されると問題になるのか

前提として、生産緑地に指定される緑地は「市街化区域内」に限られるということがあります。

というのも、市街化を促進するための市街化区域において「農地や緑地を守ろう」というのが生産緑地法の目的だと前述しました。

生産緑地は期間が経過した場合、原則として自治体が土地を買い取るか農地として利用する人に斡旋する仕組みとなっていますが、それができない場合に制限が解除されることとなります。

しかし、財政の問題などから実際に自治体が買い取ることは少なく、宅地への転用が行われています。

生産緑地に関して2022年が問題になる背景

生産緑地の指定が始まってから30年が経過する2022年、財政難により自治体が生産緑地を買い受けることは期待できません。

自治体が買い受けない生産緑地は宅地に転用され、一斉に不動産市場へと開放されることになるでしょう。

なぜなら、固定資産税も宅地並み課税となり、農家も土地を維持することが困難になることが予想されるからです。

もともと市街化を促進するための市街化区域内にある良好な土地(宅地に転用が可能な土地)なので、大量に出回れば、不動産市場における需要と供給のバランスは当然に崩れます。

結果として、不動産価格が下落し経済への影響が出てくる。

というのが「生産緑地における2022年問題」です。

 

2022年問題は法改正により事前に収束しそう

一斉に宅地化が起こると言われていた生産緑地ですが、この1年で行われた法改正で事前に問題が収束しそうな雰囲気になってきました。

具体的には平成29年6月に「改正生産緑地法」が施行され、特定生産緑地などの新たな制度がスタートするとともに、平成30年9月に「都市農地の賃貸の円滑化に関する法律」が施行されたことにより、生産緑地を所有している人にとって選択肢がグンと広がりました。

土地の所有者は生産緑地を「特定生産緑地」として維持することにより、地域貢献を含めた土地の有効利用が可能となります。

2020年のオリンピック後に不動産価格が急落するなんていうことを言う人もいます。

そして、その2年後の2022年、さらなる不動産価格の下落を招きかねない生産緑地の問題を法改正で乗り切ろう、という国や政府の思惑が透けて見えます。

 制度改正の理由や思惑はどうであれ、そのような制度になったのであれば、それを最大限に利用してしまえば良いと思います。

まずは平成29年6月に施工された改正生産緑地法から。 

平成28年5月13日に閣議決定がされた「都市農業振興基本計画」に基づき、国土交通省が様々な観点から都市農業を継続可能なものにするために、講ずるべき施策として進めてきた結果がこの法改正です。

特定生産緑地制度の創設

生産緑地法の改正によって新たに創設された制度です。

「特定生産緑地」の指定を受けることでこれまでの税制特例措置と、自治体への買取申し出期間を10年延長できます。

10年経過後は繰り返し10年の延長が可能です。

注意しなければならないのは、生産緑地の指定を受けてから30年経過前までにこの「特定生産緑地」の指定を受けなければならない点です。

 

面積要件の緩和

これまでの生産緑地制度は「一団で500㎡以上の規模の区域」が要件でした。

しかし、改正後は「同一敷地や隣接する街区内に複数の農地がある場合は、まとめて一団とみなす」ことや「面積要件を市町村が条例で定めることが可能」になりました。

面積は下限が300㎡で、東京都立川市は「300㎡」としています。

 

建築規制の見直し(直売所などを可能に)

以前は生産緑地地区内に設置可能な施設は、農林漁業を営むために必要で、生活環境
の悪化をもたらすおそれがない農業用施設に厳しく限定していました。

ところが、農業団体等から直売所等の設置を可能とする要望がかねてより多くあったそうです。

そこで今回の改正では、

  • 生産緑地内で生産された農産物等を主たる原材料とする製造・加工施設
  • 生産緑地内で生産された農産物等又は上記施設で製造・加工されたものを販売する
    施設
  • 生産緑地内で生産された農産物等を主たる材料とするレストラン

 などの農業者の収益性を高める施設が建築できるようになりました。

 

都市農地の賃貸の円滑化に関する法律(平成30年9月施行)

もっとも大きい改正といっても過言ではない「都市農地の賃貸の円滑化に関する法律」。

目玉は名前の通り、生産緑地となっている場所を賃貸できるということです。

これまでは生産緑地を賃貸するとなると農地法が障害になっていたり、生産緑地特有の優遇課税が打ち切られたりと、賃貸をすることに躊躇せざるを得ない状況でした。

 

農業従事者への生産緑地の賃貸が可能に

「土地を貸すと帰ってこない!」といったことは、この法律のでは想定されていません。というのも、自動で更新してしまう法定更新が無い制度となっているからです。

既に多くの生産緑地をお持ちの方が活用に向けて動いています。

貸し付ける先は、大きくふたつ考えられます。

  1. 自分の農地を拡大しようとしている個人農家(若手農家の新規参入も含む)
  2. 市民農園の開設などをしている企業・団体など

特に「2」の市民農園は基本的に近隣に住んでいる方にのみサービスを提供する形態になっていることが多いです。

ですので、地域内に開設できる数に実質的には限りがあるため「開設は早い者勝ち」という側面があります。

 

賃貸する際でも課税の優遇措置が受けられる

国の狙いは他の農家への賃貸という選択肢を作ることで、農地の保全を進めることにあります。

跡継ぎがいない高齢の農家でも特定生産緑地の指定を受け、なおかつ農業事業者に貸し出せば10年間の優遇措置を受け続けられます。

農地が宅地化され大量に供給される動きを抑制したいようです。

 

いま都市農地が求められている

最近は

「生産者の顔が見える生産物を選びたい」

「地元で採れた物を口にしたい」

「場所があれば、自分で野菜づくりをしてみたい」

といった声が増えてきていると感じています。

 

現に自治体が行っている市民農園は抽選になるぐらいに注目を集めています。

でも、各自治体が提供している市民農園は、野菜づくりのサポート体制があまり行き届いているとは言えず、初心者にはなかなか大変で、どちらかというと上級者向きな気がします。

一方で、貸農園事業者が提供する貸し農園は野菜づくりに関して手厚いサポートをしてくれて、初心者でも野菜づくりを楽しめます。

これまで、野菜づくりはしてみたいけど一歩を踏み出せなかった人も、自分で作った野菜を食べることができるようになります。

特に子どもにとって、良い体験教育の場になりそうです。

都市部に住む子どもたちは、スーパーに売っている野菜は知っていても、畑にある野菜の状態を知りません。

私自身も小さい頃、地方への旅行で畑を見たときに、はじめて大根がどのように育てられているのかを知り、驚いた記憶があります(土の中で大きくなるなんて想像していなかったのでしょう)。

農家の人にとって、これまでの生活を支えてくれた土地が単に宅地としてではなく、再び人々の食事を支え、命を育む農地として地域に貢献することができれば、この上ない有効利用だと思いませんか。

これは生産緑地をはじめとした都市農地にしかできないことだと思いますよ。

 

by 大丸商事 長谷川浩一

 

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