空室は「収入=ゼロ」ではない
経営感覚をしっかり持って賃貸事業を行っているオーナー様には不要なお話です。
「いかに選ばれるか」、そして「住み心地を追求できるか」。
賃貸住宅の収益を安定させるにはこの2点が重要です。
陳腐化した設備は更新する
当たり前のように感じられるかもしれませんが、意外と難しい設備の更新。
退去が発生し、原状回復工事と同時にリフォーム工事を行う際、陳腐化した設備は入れ替えたほうが良いです。
なぜならば、今の賃貸住宅市場は「借り手市場」となっていて、競合物件が多くある中で選ばれる必要があるからです。
機能として問題がなくても、”積年の傷み”やプロのクリーニングでも”落ちない汚れ”が目立ってきたら交換を検討します。
特に水回り設備(キッチン・洗面・浴室)は内見時もしっかりチェックされる場所です。
現実には壁・床・天井に割かなければならない費用が膨らみ、設備まで入れ替えると収益と見合わなくなる事例も確かにあります。
しかし、単純に「修繕(コスト)」と考えるのか「再投資」と考えるのかで、費用負担の意味合いが感覚的にも税務的にも大きく異なります。
まずは「いかに選ばれるか」を重視します。
賃料を下げない工夫
入居者の困り事に対して、オーナー様がどんな対応をするかで物件の”住み心地”は大きく変わります。
管理委託をしている場合の窓口は管理会社になりますが、管理会社との意思疎通ができているかも影響するでしょう。
入居者の困り事には「ハード面」と「ソフト面」があります。
「ハード面」は設備など物理的なものが主なものとなります。
「ソフト面」は人に原因があるものが多く、騒音など挙げられます。
今回は、”ハード面”についての工夫を紹介します。
入居年数の長いお部屋はどうしても設備の劣化により、「調子が悪いから直してほしい」というリクエストが入ります。
この時に、「修理ではなく交換する」「交換する場合は全くの同等品ではなく、少しアップグレードした物」といったことをすると喜ばれます。
修理ではなく交換の事例
「エアコンの調子が悪いから直してほしい」とリクエストが入りました。
年式を見ると約8年前のエアコン。業者さんに見てもらったところ、部品交換で直りそうです。
ここで報告を受けたオーナー様、「最新のエアコンに交換して」と一言。
一番ビックリしたのは入居者でした。
というのも、後日談で冷暖房が効き始めるまでの時間が長く、電気代の関係もあり、入居者が自らの負担で新品に交換してよいか交渉しようとしていた事がわかりました。
「直してほしい」の裏には「交換」という意図が隠れていたのです。
仮に入居者が自ら交換する交渉をしていたら、次回更新時に賃料の交渉があったかもしれません。
賃料の交渉にオーナー様が応じなければ、ますます声なき不満は溜まっていたでしょう。
交換はアップグレードした物の事例
「玄関のチャイムが鳴らなくなりました。室内のチャイム部分の電池を交換してもやっぱりダメです。修理をお願いします。」とリクエストが入りました。
オーナー様に報告したところ
「確か女性のひとり暮らしだったよね。モニター付インターホンに交換して。」
との指示を受けました。
その女性入居者にはセキュリティー性が高まったと、喜んでいただきました。
このように、今後更新する予定のある設備で、入居中でも工事可能なものについては、可能なタイミングで行うと入居者にも喜ばれますし、なにより入居者の賃料値下げ交渉の可能性が下げられるメリットがあります。
仮に賃料値下げ交渉があっても、「この間、設備更新した」という事実があるので、応じないという選択がしやすくなります。
また、入居者には、オーナー様が真剣に”住み心地” を考えていることが伝わりますので、住替え目的での退去は防ぎやすくなります。
空室は「収入=ゼロ」ではない
空室になると、当たり前ですが賃料収入は「ゼロ」です。
しかし、本当に「ゼロ」でしょうか。
実際には以下のような費用が発生していませんか?
- 電気基本料(内見時に照明が点灯するため)
- 消防点検料(自動火災報知設備がある場合)
- 共用部清掃
- 共用部電気代
- 借入金の金利
- 固定資産税 etc.
このように空室を維持するためのコストが発生しているはずです。
ですので、空室は「収入=ゼロ」ではなく、「収入=マイナス」が本来の姿です。
大事なのは「空室を出さない」「空室が発生した場合、一日でも早く成約させる」こと。
つまり ”住み心地を追求する”、”選択される” ことが必要です。
by 大丸商事 長谷川
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